2024年1月30日火曜日

とっておきの話521「自分身を使い分ける」の裏話

  Xに、とっておきの話521「自分身を使い分ける」の原稿をアップしました。

とっておきの話521「自分身を使い分ける」の原稿


分人主義

という言葉を知り始めていた当時。

人には必ず分人と呼ばれる人がいて、みんなその場所の状況や人間関係に合わせた自分の分身を使い分けているという考え方です。

人によっては分人がたくさんいる人も、分人なんていない人もいるかもしれません。


分人という言葉は子どもにとっては難しいので、何か代わりになる言葉を探していました。

そこで、自分の分身という意味で

自分身

という言葉でとっておきの話を創ることにしました。


それでは原稿をどうぞ⇩


板書 自分 何と読みますか。斉読 自分 ですね。突然変なことを聞くかもしれませんが、自分は世界で何人いると思いますか? 板書 自分は一人  たった一人ですよね。当たり前だと思ったみなさんにこんな言葉も教えます。

板書 自分身 何と読むと思いますか。 これは、「じぶんしん」と読みます。

どんな意味の言葉だと思いますか?指名


自分身とは、自分の分身という意味です。世界に自分は一人しかいませんが、自分の中にいる自分の分身は…実はたくさんいるのです。

板書 自分身=自分の分身 は、たくさんいる。

提示   A 家族と過ごしている時の自分

     B 友達と過ごしている時の自分

     C 先生と過ごしている時の自分

 例えば、誰と過ごしているかが変わるだけで、自分身は変わります。家族、友達、先生、それぞれ自分の言葉遣いや行動が変わりませんか?他にも、「いつ」「どこで」が変わるだけでも、自分身は変わります。

 みなさんは自分身、何人いるでしょうか。


板書 自分身を使い分ける

 大切なのは、自分身を相手や時、場所によって使い分けることです。自分身を意識すると、相手から信頼されやすい人になれます。

さぁ、今は先生が前に立って話している教室での時間です。どの自分身を意識したら良いかわかるかな?

板書 分身!

 みんなで分身!と言って、意識した自分身を見せてください。いくよ~

斉読 分身!



いかがでしたか。


抽象的な概念なので、最後にみんなで分身するイメージを膨らませる演出を取り入れました。

子どもたちは大人と比べて素直な心をもっています。

なので、ありのままの姿でどんな人とも接することができます。

その一方、TPOに合わせて動くことが苦手です。

時として礼儀の無い行動をしてしまうこともあります。


また、ありのままで生きようとするほど、人間関係の中で悩むことも増えます。

もっと柔軟に、自分が目の前にしている人との関係性に合わせて自分の分身を使いこなす人になってほしいです。


大人の社会なんてそうですよね?

みんながみんなありのままで働いている訳では無いと思います。

学校も同じです。

どこかで譲り、どこかで譲ってもらって人間関係は形成されていきます。


今はどの自分身を出したらいいのかな?


ここを瞬時に見極めて行動できる子に育ってほしいです。



気になった方はぜひ、実践してみてください。

ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

2024年1月29日月曜日

とっておきの話520「サインフレンド」の裏話

  Xに、とっておきの話520「サインフレンド」の原稿をアップしました。

とっておきの話520「サインフレンド」の原稿


 友達とは何ですか?

 この質問は、大人でも明確に答えることは難しいでしょう。


 さらに、「親友」なんて言葉もあります。

 友達と親友の違いは何ですか?

 これも人によって答えは様々でしょう。


 このように友情や仲間をテーマにした話は、1つの小話だけでは包み切れないものです。

 しかし、少しずつ新しい視点を増やしていくことで、このテーマの探究を子どもたちと一緒に楽しむことはできます。


 今回の小話「サインフレンド」は、当時私が「友達」と「親友」の間にもう一つ友情のステップがあるのではないかと仮説を立て、「阿吽の呼吸」という言葉と組み合わせてできた語りです。


 クラスの仲間とは友達になれない子がいても、サインフレンドにはみんなとなれる。

 そんな願いを込めました。


 それでは原稿をどうぞ⇩



板書 阿吽の呼吸

何と読むでしょう。 「あうんのこきゅう」と読みます。

「阿」は口を開き発する声なので息を吐くこと。

「吽」は口を閉じ発する声なので息を吸うこと。

つまり、「阿吽の呼吸」とは「息を合わせる」という意味です。

板書 息を合わせる

 みなさんには、友達の中でも特にこの人とは息がぴったり合うという友達はいませんか?


板書 サインフレンド

 サインは英語で「仕草、合図」、フレンドは英語で「友達」という意味です。

小さな仕草や合図だけで息がぴったり合う友達のことをサインフレンドと言います。

 サインフレンドの関係を続けていると、友達がだんだんと親しい友達へと変化していきます。それを「親友」と呼びます。

板書 親友

 いきなり「親友」の関係を目指すのは難しいでしょう。

しかし、サインフレンドの関係なら、身近な友達から作っていくことができます。それは、まだ友達ではない新しく出合ったクラスの仲間とも、そんな関係が築けるはずです。


試しにみんなで一緒に息がぴったり合うサインをしてみましょう。

演出(以下のように、同じポーズをするレクを取り入れる)

①「先生と同じポーズをしてみてください」と言ってみんなでやる

②「○○くんと同じポーズをしてみてください」と言って子ども同士でやる



いかがでしたか。


この話をすると、子どもたちは小さな仕草や合図をお互いに積極的に使うようになります。



特に声を出さずに意思疎通ができる喜びを味わうと、サインフレンドの人間関係形成が加速します。

学級内に温かい阿吽の呼吸を生み出すことができれば、子ども同士の人間関係は良好なものになっていくでしょう。


「サインフレンド」という言葉は、当時私が思いついた造語です。

私が思うに、本当の親友とはこういうことができると思うのです。

お互いの気持ちを察して動く。

これは大人でも難しいですよね。

でもそれができる。

そういう関係を、親友と言うのではないでしょうか。


また、友達でなくても、クラスの仲間としてサインフレンドになることもできます。

合う合わないはどうしてもあるけども、いざ協力する時にはサインフレンドになってお互いの気持ちを察して動いていく。

そんな関係性もまた良いのではないでしょうか。


気になった方はぜひ、実践してみてください。

ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

2024年1月24日水曜日

とっておきの話519「物を大切にできない人は」の裏話

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とっておきの話519「物を大切にできない人は」の原稿


 物と人というのは、いつも何かしらのつながりがあると思うのです。

 なぜなら物は全て、人が創り出したものですから。

 もちろん、自然界が創り出した崇高な物もありますよ。

 でもそれだって、人が定義づけた物ですよね。

 そして、私たち人も自然界が創り出した物なのですから。

 自然を介したとしても、やはり物と人は深くつながっているのだと思います。


 こうした考え方のもと、私はよく物を人に喩えて子どもたちに指導することが多いです。

 幼児の成長過程にも見られる

 アニミズム

 という心理作用を踏まえた指導です。

 典型的なものとして、生命のないもの(玩具や車など)に生命や意思があると考える心理作用を指します。



 発達していく中でこの心理作用が薄れる子もいますが、完全に消える訳ではありません。

 それに、物にも命があるという考え方で物に接した方が良いことは意外とたくさんあります。

 今回の話も、その「良いこと」の1つの事例を提示しています。



 それでは原稿をどうぞ⇩


提示 傷つけないで。汚さないで。大切にして。

今日は何についての話だと思いますか?

物を大切にしましょうという話だと思った人?挙手

手を挙げた人は、半分正解ですが、半分不正解です。


 提示 物を大切にできない人は

 実はこの続きがあるのです。どんな言葉が続くと思いますか?指名

ヒントを見せますね。

提示 物を大切にできない人は、□も大切にできない。

 □に入る言葉、もう分かりましたね?


 正解は、人 が入ります。

確かにそうだと思った人?挙手

なぜ物を大切にすることが人を大切にすることにつながるのかな?指名

なるほど。物との接し方は、人との接し方とつながっているようですね。


提示 物を大切にできる人は、人を大切にできる。

 みなさんは、物も人も大切にできる人になってください。そのために、まずは物を大切にすることから意識してみましょう。人を大切にできる人に成長していきます。すると、あなた自身が人から大切にされる人になれます。

提示 人を大切にできる人は、人から大切にされる人になる。


いかがでしたか。


物を大切にできる人は、人も大切にできる。

物を大切にできない人は、人も大切にできない。


よく「物に当たるな」という言葉を聞きますよね。

あれは真理だと思うのです。

なぜなら、怒れた時に物に当たっているような人は、そのうち人に当たる人になるからです。

子どもたちには、物を大切にしないことを何とも思わないような哀しい人にはなってほしくありません。


この話は、特別支援学級の子どもたちにも語ったことがあります。

彼らの場合は、全体で語るだけでなく、その後も合言葉として何度も個別に声を掛け続けました。

物を大切にしている場面では、物に代わって嬉しそうな声を聞かせました。

物を大切にしていない場面では、物に代わって悲しそうな声を聞かせました。

そんな積み重ねをしていく中で、物にも人にも優しくできるようになった子はたくさんいます。


物と人とのつながりを意識すると、身の回りの物への見方も大きく変わります。

そして、人を大切にできる人は、人から大切にされる人になります。

全ての子どもたちがそんな人になってほしいと願い、語るようにしています。



気になった方はぜひ、実践してみてください。

ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

2024年1月20日土曜日

とっておきの話518「自分勝手と相手意識」の裏話

  Xに、とっておきの話518「自分勝手と相手意識」の原稿をアップしました。

とっておきの話518「自分勝手と相手意識」の原稿


 四字熟語は語りの中でキーワードになりやすい素材です。

 さらに、イメージしやすい四字熟語と反対の言葉も四字熟語で表せることができるのなら、よりキーワードとしての役割を果たせる素材となります。


 自分勝手相手意識


 この2つの四字熟語は、語った後も様々な場面で応用できるキーワードと言えるでしょう。


 「それは自分勝手だね。相手意識をもっと高めよう」と呼びかけることもできるし、

 「今の相手意識、よかったよ!自分勝手な人がいなくてすばらしい」と褒めることもできます。


 語りを通して、こうした日常に溶け込んでいくキーワードを子どもたちと一緒に共有することはとても大切です。



 それでは原稿をどうぞ⇩


板書 自分勝手


 この中に、自分勝手な人を見たことがある人?挙手

 では、自分勝手だったなぁと自分自身が思ったことのある人?挙手


 自分勝手な相手も嫌だし、自分勝手な自分も嫌ですよね。

 今日は、そんな自分勝手とは反対の言葉を紹介します。何だと思いますか?

ヒントは、同じ四字熟語です。


板書 相手意識

 「あいていしき」と読みます。読んでみましょう。さんはい。斉読


 自分勝手から脱け出すためには、相手を意識することが大切です。

相手を意識するということは、相手の気持ちを考えることにつながります。


提示 思いやり 親切 ありがとう ごめんなさい・・・

 これらは全て、相手意識からつながった行動や言葉です。


演出 板書された「相手意識」という言葉を指差しながら 

もう一度読んでみましょう。さんはい。斉読

 

 みなさんは今日から、自分勝手を脱け出し、相手意識ができる人になってください。そこから様々なステキな行動や言葉につながるはずです。すると、もっと相手意識ができるようになりますよ。

相手意識の輪を、このクラスで広げていきましょう。



いかがでしたか?


実は、自分のことを自分勝手であると自覚していて自分勝手な行動をしている人って、そんなに多くいません。

大体が、自分勝手であることを自覚していないパターンが多いのです。

子どもたちの中にもこうした子は多くいて、全体で語りかけることに加え、個別に声掛けしていかないといけないと思います。

教師の語りかけや声掛けを通し、どんな行動が自分勝手になってしまうのか自覚していく。

その過程を踏まえ、相手に意識が向いていくのではないでしょうか。


相手意識のはじめの一歩は、自分の自分勝手さを自覚することなのです。



人間誰しも自分勝手な部分があります。

でもだからこそ、相手意識につながるのびしろを誰しも持っていると言えるのです。


どんなに自分勝手な子どもでも、相手意識につながる芽はきっと出ているはずです。



気になった方はぜひ、実践してみてください。

ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

2024年1月17日水曜日

とっておきの話517「大嫌いな自分も、大事な自分。」の裏話

  Xに、とっておきの話517「大嫌いな自分も、大事な自分。」の原稿をアップしました。

とっておきの話517「大嫌いな自分も、大事な自分。」の原稿


 自分のことが好きな人もいれば、嫌いな人もいます。

 たとえ自分のことが好きな人でも、もしかしたら大嫌いな自分に出合う瞬間が来るかもしれません。

 そんな大嫌いな自分も、自分の中の一部だと捉える。

 さらに言い換えると、自分を受け止めることができるようになりたいですね。


 自己肯定感の低い子どもたちは、何でも自己否定してしまいがちです。

 そんな自己否定を自己受容に切り替えるきっかけづくりになればと思います。



 それでは原稿をどうぞ⇩


板書 大嫌いな自分

 みなさんは、自分のことなんて大嫌いだと思ったことはありますか?

自分のことをなかなか好きになれない人もいるかもしれませんね。


 最近、ドラマを観ていたら主人公が「こんな私なんて大嫌い!」と叫ぶシーンがありました。夢に向かってがんばっていたのに、失敗の連続で思うようにいかない自分のことが嫌になったのです。その時、主人公のお母さんが言った言葉がとてもステキな言葉でした。こんな言葉です。


板書 大嫌いな自分も、大〇な自分。

 〇の中には漢字1文字が入ります。何だと思いますか?


正解は

板書 大嫌いな自分も、大事な自分。

です。


大嫌いな自分がいてもいい。それも大事な自分なのです。



最後に先生から、みんなに次の言葉を贈ります。


提示 演出 ゆっくりと気持ちをこめて読み聞かせる


  大好きな自分も、大嫌いな自分も、ぜんぶ大事な自分。

  自分を大事にできて初めて、相手を大事にできる。

  自分を大事にできる人は、相手から大事にされる人になる。

  大嫌いだと思っていた自分を大事にしてくれる人に出会える。

  そうやって、大嫌いな自分はいつかきっと、大好きな自分の一部になる。


いかがでしたか。


 いきなり自己否定から自己肯定に切り替えるのは難しくても、まず自己否定から自己受容には切り替えられそうですね。

自己受容ができて、その次に自己肯定が来るのだと思います。

自己受容はいわば、自己否定と自己肯定が入り混じっている状態。

でも、自分を自分だと受け止めている状態です。


大嫌いな自分も、大事な自分。


 この言葉から、自分を大事にする気持ちを育てていってほしいです。

 さらに、語り終わりには、この言葉を引き立てるような言葉を紡いでみました。

 しかし、聞き手の実態によっては、蛇足になる可能性もあります。

 ここら辺の見極めは非常に難しく、付け加えるべきかどうか今回も迷いました。


 ちなみに素材は朝ドラから来ています。



 朝ドラはいつもハッとするようなセリフに出合う可能性が高いです。

 何気なく観ているものから思わぬ素材がやってくるものです。



 ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

 気になった方はぜひ、実践してみてください。

2024年1月14日日曜日

とっておきの話516「自信と約束 ~自分との約束を守る自分に~」の裏話

  Xに、とっておきの話516「自信と約束 ~自分との約束を守る自分に~」の原稿をアップしました。

とっておきの話516「自信と約束 ~自分との約束を守る自分に~」の原稿



 当時の私は、中田敦彦さんのYouTubeチャンネルにハマってよく観ていました。

 このとっておきの話は、その中でハッとさせられた「自信」についての小話です。

 

 自信が無い人は、大人も子どもも本当に多い時代となりました。

 教師であっても、自信の無い人は大勢います。

 担任する子どもたちも、自信の無い子で溢れています。

 そんな中で、「自信」をテーマにした語りは絶対に必要だと思います。

 この語りもそんな語りの1つの例としてご覧ください。



 それでは原稿をどうぞ⇩


提示 自信

みなさんは、自信がありますか。ある人?ない人?挙手

では、自信の付け方を知っている人?挙手 指名


 今日は自信の付け方を1つ紹介します。

提示自分との約束を守ると、自信がつく。

自信は、自分との約束を守るとつきます。どういう意味だか分かりますか?


板書 自信=自分を信じる

自信は、漢字で「自分を信じる」と書きます。では、どうしたら自分を信じられるのでしょうか?それは、自分が信じる側で考えてみると答えが見えてきます。つまり、あなたはどんな人を信じたいと思うかを考えるのです。


提示

A いつも約束を守らず、なまけている人

B いつも約束を守り、努力し続けている人


AとB、あなたはどちらの人を信じたいですか?挙手

Bを選ぶ人が多いと思います。これは、自分に対しても同じです。


板書 自信=自分を信じる=自分との約束を守る




人は何かしら自分との約束をしているものです。それは目標と言い換えても良いでしょう。○○を目指す。○○は絶対にやり切る。○○だけはしないようにする。みなさんにもあるはずです。目を瞑って少し考えてみてください。


 

自分との約束、思い浮かびましたか?その約束を守り続けることができると、自分を信じられるようになります。

みなさんもぜひ、自分との約束を守り、自信いっぱいに毎日を思い切って過ごしてみてください。

自分を信じられる人こそ、人から信じてもらえる人になります。

自信が無くなってきたら、またこの話を思い出してみてください。


いかがでしたか。


自分との約束を守っていると、自信がついてくる


当時の私は、この「自分との約束」という視点が素敵だなと思いました。

自分との約束を守れる人は、他人との約束も守れる人なのですよね。


すると、自信だけでなく、他信も積み重なるのです。

周りから信用される人になれる。

この原点となるのが、自分との約束を守ることなのだと学びました。



あなたは、自分との約束を守り続けていますか?

そして、担任している子どもたちは、自分との約束を守っていますか?


ここを問いかけ、自分事として振り返る機会をつくっていくと、だんだんと自信がついてくるのかもしれませんね。



気になった方はぜひ、実践してみてください。

ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。


2024年1月7日日曜日

とっておきの話515「自由の芽と責任の芽」の裏話

  Xに、とっておきの話515「自由の芽と責任の芽」の原稿をアップしました。

とっておきの話515「自由の芽と責任の芽」の原稿



 自由と責任


 両者とも道徳的テーマとして取り上げられやすいものですよね。

 自由を得るためには、責任を果たさなければならない。

 責任を果たすためには、自由が保障されていなければならない。

 両者は相互関係で成り立っています。


 しかし我々は、自由と責任を切り離して考えてしまいがちになります。

 子どもたちもそうです。

 自由ばかりを主張する子や、

 責任に押しつぶされそうになっている子がいます。


 こうした自由と責任の関係性を、芽に喩えて語る試みが今回の話です。


 それでは原稿をどうぞ⇩


板書 芽の絵を描く

これは、みんなの心の中にある自由の芽です。


板書 自由の芽

誰もが育てたい芽です。自由が広がると嬉しいですよね。自分は今、どれくらいこの芽が育っていると思いますか?体で表現してみてください。


演出 子どもたちにジェスチャーを促す

なるほど。でもね、先生は同時に育ててほしい芽があると思っています。


板書 ○○の芽

○○の中にどんな言葉が入るか分かりますか?指名


自由の芽と一緒に育てる芽。正解は…責任の芽です。

板書 責任の芽


 自由の芽と責任の芽は、同じ高さで育てていかないと心のバランスが悪くなり、思うように自由がもらえなかったり、責任の重さに辛くなったりします。


提示

A 自由の芽が高く、責任の芽が低い状態

 

B 自由の芽が低く、責任の芽が高い状態

 


 Aのように自由の芽ばかり育つとわがままな心が育ち、「ルールを守る」という責任を果たさずに自由と向き合うことになります。これでは周りの人とトラブルが起きたり、危険にさらされたりして心配なので自由は与えられません。

 Bのように責任の芽ばかり育つと責任感をもち過ぎてしまい、限られた自由の中でがんばることになります。これでは息苦しく、心が疲れてしまいます。


自由の芽と責任の芽は同時に育てていきましょう。自由が増えると楽しい思い出ができます。責任を果たす経験を積み重ねると自信が湧いてきます。

みなさんなら、どちらの芽も伸び伸びと育っていくことでしょう。


いかがでしたか。


芽に喩えて表現してみると、自由と責任の関係性がよくわかるのではないでしょうか。

自由の芽と責任の芽は同時に育てていかなければならない。

といったメッセージが伝わる語りになればと思いました。

実際にこの話は、卒業式で使われた方もいるようです。


抽象概念ほど、視覚的にわかりやすく具体物に喩えて表現する。

見せる力の語り術の1つですね。

最近、フォロワーさんで、抽象と具体の往還が大切という考え方をされている方がいらっしゃいました。

私の語りも、抽象と具体を往還しながら子どもたちに伝えたいメッセージを届けているなぁと思います。


どんな抽象があり、それをどう具体化していくか。

また逆に、具体に対して、どんな価値を付与して抽象化していくか。

この往還が大切なのだと思います。


自由と責任の話も同じ。

このままでは抽象的なままです。

どう料理するか、いつも料理人の腕が試されています。



ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

気になった方はぜひ、実践してみてください。

2024年1月6日土曜日

とっておきの話514「私を支えるもの」の裏話

  Xに、とっておきの話514「私を支えるもの」の原稿をアップしました。

とっておきの話514「私を支えるもの」の原稿



 今日から、拙著『こどもの心に響く とっておきの話100』でしか公開されていなかった原稿もアップすることにしました。

 Xでもポストしましたが、語りの内容だけが大事なのではなく、ねらいや背景も大事なので、まだ読まれていない方はぜひこの機会にご購入ください。


 自分が今、どれだけの数とっておきの話を創ってきているのか、正確に把握したかったんですよね。だから、書籍でしか紹介していなかったとっておきの話と向き合う機会をつくってみました。


 今回紹介する「私を支えるもの」は、執筆をしていく中で詩を素材にしたとっておきの話に偏りがあると編集者さんからご指摘を受けたことがきっかけで出合った素材をもとに創った語りです。


 その頃の僕は、相田みつをの詩ばかり素材にしていました。

 調べていくと、銀色夏生さんという詩人に出合うことができました。



そんな銀色夏生さんの詩集から、ピンと来た詩を素材にしています。



 それでは原稿をどうぞ⇩


板書 自由

 みなさんは、自由になりたいと思ったことはありますか?

 実は、自由になる方法を教えてくれる詩があります。読んでみたいですか。

…こんな詩です。


提示

私を    ものを

私が忘れる時

私は自由になる


 

どうやら何かを忘れると、自由になれるようです。□にはどんな言葉が入ると思いますか。


正解はこちらです。


提示

私を支えるものを

私が忘れる時

私は自由になる


 「私を支えるもの」というのは、例えばみなさんなら何を思い浮かべますか?

家族や友達などの大切な人を思い浮かべる人もいれば、お気に入りのぬいぐるみやゲームなどの大切な物を思い浮かべる人もいるでしょう。それらを忘れる時、あなたは自由になれるのです。つまり、支え無しで自立して生きると、自由になるという訳です。



板書 自立➡自由

 自分を支えるものを忘れるくらい自立できた時、本当の意味で自由になれるのかもしれませんね。

 支えてくれる人や物に感謝することは大切ですが、そこに甘えてばかりでは自由になれません。

 ぜひ、自分の人生を自分で歩んでください。

 その先にきっとあなたの望む自由な世界が待っているはずです。



いかがでしたか。


自由と自立のつながりについて考えさせられる詩ですよね。


子どもたちからすると、自由と自立につながりを感じている子は少ないかもしれません。

どうしても自由と聞くと、「~してもらう」「~し放題」といった印象が強いからです。


しかし、実際は自立していることが重要なのです。

自由を自分でコントロールする力と言いましょうか。

別のとっておきの話『自由の芽と責任の芽』にもつながりそうな話ですよね。


自由を手に入れるためには、自立すること。


そんなメッセージを伝えてみたいです。


銀色夏生さんの詩は他にも素敵な詩がありますので、これを機に気になった方はぜひ詩集を読んでみてください。



ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

気になった方はぜひ、実践してみてください。

2024年1月4日木曜日

とっておきの話513「もともとあなたの中にある 素敵」の裏話

  Xに、とっておきの話513「もともとあなたの中にある…素敵」の原稿をアップしました。

とっておきの話513「もともとあなたの中にある…素敵」の原稿



 今回の参考文献は、aco**:.°.。さん(@aco_fav555)の2021年11月30日の投稿です。

素材提供を快諾してくださり、ありがとうございました。


 フォロワーさんのacoさんは、とても感性が豊かな方で尊敬しています。

そんなacoさんの感性豊かな言葉の表現は、読む人の心を温かくしてくれます。

自分がそんな感覚になったので、担任している子どもたちにも同じ感覚を味わってほしいと思い、小話として創ることにしました。


 素敵だなぁと思うこと。みなさんにもありますよね?

 でもそれは、自分一人だけで思ったわけではなくて、今まで自分に出合ってきてくれた、たくさんの素敵なもののおかげ。それを与えてくれた他人のおかげ。

 そう考えると、より自分の心の中にある素敵なものが、愛おしく思えてきます。


 それでは原稿をどうぞ⇩


板書 素敵

 読んでみてください。さんはい。斉唱 すてき

 先生は最近、こんなものが素敵だと思いました。

提示 話し手が素敵だと思った身近な写真 下は例



みなさんも先生と同じように、素敵だなと思った人?挙手

みなさんが最近、素敵だなと思ったものは何ですか。指名  

なるほどね。どれも素敵なものですね。


提示

誰かの素敵だなと思えることは、もともとあなたの中にあるもの

人は自分にないものを、他人の中に見ることはできないのだそう

もっと素敵を探そうと思う日々


演出 上の文を読み聞かせる


 これは、先生の知り合いの先生が教えてくれたことです。

 人は自分の中にある素敵だと思うもののおかげで、他人の中にある素敵なものを見つけ出すことができるようになっています。

 さっき先生の素敵なものを、同じように素敵だと感じて手を挙げてくれた人たちは、もうすでに自分の中にそれが素敵だと思う心があるということです。

 自分の心の中に素敵なものが増えれば増えるほど、他人の心の中の素敵なものをより見つけ出すことができる人になれます。

 すると、また自分の心の中に素敵なものが増えます。

 

 だからこそ、この先生は教えてくれています。

板書 もっと素敵を探そう

と。


「のはらうた」という詩を作って有名になった詩人の工藤直子さんも、こんな事を言っています。

提示

あなたが気に入った詩は あなたが作ったのも同じよ だから、その詩はあなたのもの あなたにあげる!


自分の心の中の素敵なものと、他人の心の中の素敵なものをお互いに分かち合える世界って、なんだか素敵だと思いませんか。

ほら、また素敵が増えましたね!

これからもっと、一緒に素敵を探していきましょう。】



いかがでしたか。


素敵なものって、人と人とで分かち合うからこそ、また新たに見つけていけるものなのですね。

なんだかとっておきの話づくりと共通するところがありそうです。

僕のしていることも、素敵探しの1つなのかもしれません。


みなさんの素敵なものは何ですか?

それはいつも、担任している子どもたちと、分かち合っていますか?

逆に、子どもたちの素敵なものを、見つけ出せていますか?

一緒にこれかも探していきましょう。


素敵なものを。



ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

気になった方はぜひ、実践してみてください。


とっておきの話512「「できる」は必ず「できない」の先にある」の裏話

  Xに、とっておきの話512「「できる」は必ず「できない」の先にある」の原稿をアップしました。

とっておきの話512「「できる」は必ず「できない」の先にある」の原稿



 今回の素材は、さ よ え さん(@gjanwtmmwvj)の2023年2月17日のXでの投稿を参考文献として小話を創らせていただきました。


 うちの息子も「できない」ことがあるとすぐに怒れてしまって

「もうやらない!」

 なんて言うことがあります。


 さよえさんの投稿を見て、うちの息子にもこの絵を見せながらゆっくりと語り聞かせたところ、

「いつか絶対できるから、あきらめない!」

 と言うようになりました。


 子育てにおいてこの「できる」は必ず「できない」の先にあるという考え方はとても素敵な親から子へのメッセージプレゼントになるなぁと実感しました。

 一方、小学生にもこうした「できない=自分はダメ」と思い込んでしまう子は大勢います。

 だからこそ、学校現場でもこうした考え方のメッセージプレゼントを教師から子どもたちへしていきたいです。


 今回は、担任している子どもたちの中に、そんな子たちがいることを想定して、創らせていただきました。

 

それでは原稿をどうぞ⇩


板書 できない

 今、自分にはできないとあきらめそうになっていることや、もうあきらめてしまったことはありませんか?

 あるという人は手を挙げてください。挙手 何人かどんなことか教えてください。指名

 なるほどね。今手をあげて教えてくれた人たちはきっと、「できない」の先にこんな気持ちがわいているよね。

板書 できない➡やらない

 自分にはできないから、やらない。「やらない」は必ず「できない」の先にある。そう思っていませんか。

提示 「やらない」は必ず「できない」の先にある

 でもね、それは「できない=自分はダメ」と思い込んでいるだけなのです。実は順番がちがいます。

演出 提示している言葉の「やらない」の部分を消す

できない自分はダメではありません。


なぜなら、「できない」の先には「やらない」ではなく…「できる」があるからです。

提示 「できる」は必ず「できない」の先にある   みんなで読んでみましょう。斉唱

提示 下の絵



この絵は「できるまでの道のり」です。

自分が思っていた順番と同じでしたか?あなたの気持ちは今、どこにいますか?


山の頂上には必ず「できた」という気持ちがあります。一番左下を見ると「やらない」という気持ちです。

「できない」という気持ちは道のりの真ん中にあって、その先に必ず「できる」という気持ちがあるのです。

大事なのはできなくても「やってみる」こと。

「できない」が続いたとしても、「やってみる」を続けていくと「できるかも」に変わり、やがて必ず「できた」という気持ちにたどり着くことができます。

人それぞれ「できる」内容は違うでしょう。

でも、「やってみる」を続けた人はみんな、「できた」にたどり着けるのです。


板書 「やってみる」を続ければ、「できない」は「できる」に変わる

「できない=自分はダメ」と思い込まないでください。あなたは今できないだけ。いつか必ず、できる!

 「やってみる」を続ければ、「できない」は必ず「できる」に変わります。

 「できる」は必ず「できない」の先にある。

「できない」ことさえ楽しみ、「やってみる」エネルギーに変えていってしまいましょう。

そんな人は、「できた」時の達成感もきっと人一倍大きくなるでしょう。


いかがでしたか。


さよえさんの描いた絵がわかりやすいですよね。


今まで自分は「やらない」は必ず「できない」の先にあると思い込んでいる子って多いと思うんです。

そんな中、「やらない」は実はできるまでの道のりで言うところの山のふもとであり、スタートすらしていない場所なのだというギャップを演出できます。


そうか、「できない」から「やらない」というのは、できるまでの道のりでいうと順番が逆なんだ。自分で勝手に逆戻りしていたんだ。


そんな気付きが得られそうです。


また、絵の中にはたくさんの「できない」がありますが、その度に

「できなくてもやってみる」

という気持ちが隠れているのだと行間を読み取ることができます。


だからこそ、どんなにたくさんの「できない」に出合ったとしても、「やってみる」を続けていけばいつか必ず「できる」にたどり着けることを、子どもたちに伝える語りにしたいと考えました。

この「できるかも」の子の表情が本当に素敵な表情をしていますよね。

親としても、教師としても、この表情を見ていきたいです。



ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。

気になった方はぜひ、実践してみてください。

2024年1月3日水曜日

とっておきの話511「まず心の準備をして、美しく終わる授業に。」の裏話

  Xに、とっておきの話 511「まず心の準備をして、美しく終わる授業に。」の原稿をアップしました。

とっておきの話511「まず心の準備をして、美しく終わる授業に。」の原稿



 今回は、はむせん@EDUBASE CREW(@hamuhamuteacher)さんの投稿「体育開き」を参考文献として、小話の素材にさせていただきました。

 体育の授業での語り、今まであまり無かったのでワクワクしました。

 はむせんさん、ありがとうございました。









 はむせんさんの投稿は、以上のように全部で4つのスライドにまとまっていました。

 2話ほどに分けて小話にしても良かったのですが、迷った末、1話分にすっきりとまとめる方向性で創らせていただきました。


 ① 体育の授業前や授業の始めに何を意識するか

 ⇩

 ② 体育の授業中には何を意識するか

 ⇩

 ③ 体育の授業の終わりや授業後には何を意識するか


 この一連の流れを1つの小話でまとめて伝えることで、子どもたちにとってもわかりやすく自分事として落ちやすい語りになると考えたからです。



 それでは原稿をどうぞ⇩


今から何の授業をしますか?指名

 体育ですね。目をつむって。あなたは体育が得意ですか?それとも苦手ですか?声に出さず、心の中で答えてください。

きっと得意な人も、苦手な人もいますよね。人それぞれですから、気にすることはありません。

ですが、得意や苦手に関係なく、体育は必ずあることをして参加する授業です。何だと思いますか?指名 


それは…2つの「準備」です。

1つ目は、心の準備です。

体の前に、まず心です。運動が得意な人。「こんなの簡単!」といってふざけるのは許しません。

逆に、運動が苦手な人。「こんなのできない…」といってすぐにあきらめるのも悲しいです。だれもが「今日もうまくなろう!友達と教え合おう!」という心の準備をして、授業に参加してほしいと思います。

2つ目は、体の準備です。

いくら心が準備万端でも、体はそうではありません。

体は、心に比べて準備をするのがゆっくりです。

体の準備をしないで激しい運動をするとけがをしたり、友達にけがをさせてしまったり、最悪命にかかわることも起こります。

体育の準備運動は、自分の体を起こしてあげるつもりで、丁寧に行いましょう。



提示 カンニング

やっていいことだと思う人?挙手 いけないことだと思う人?挙手

カンニングはいけないことですよね。

でも、体育の授業ではカンニングオッケーです。

むしろ、運動が得意な友達の動きは、たくさんカンニングしてください。

さらに言えば、その友達に直接聞いてみてください。すると、こんな良いことがあります。


 提示 自分に似合う服(コツ)が見つかる   読んでみましょう。さんはい。斉唱

 例えば、みなさんが友達と一緒に洋服屋さんに行ったとします。





気になった服があったので試着したところ、似合いませんでした。

どうしますか?…おそらく、ほかに似合う服はないかな…と探したり、友達に「どんな服がいいかな?」と聞いたりしますよね。

体育も同じです。一度上手くいかなかった時は、あえて動き方を変えたり、友達にアドバイスをもらったりしてみましょう。





そうやって自分に似合う服、つまり動き方のコツを見つけると、他の教科では味わえない「できた!」という達成感を味わうことができます。

ここにいる誰もが見つけられるように、先生もサポートします。



提示 気持ちに区切りを付けて、美しく終わる。

 体育で試合をして、勝てばうれしいし、負ければ悔しいです。

これは、プロスポーツ選手も同じですから、この気持ちを我慢する必要はありません。

ただし、勝ってうれしい気持ち、負けて悔しい気持ちは終わりのチャイムで一区切りつけましょう!

勝ち負け関係なく、相手チームの気持ちを思いやる心を忘れないようにしましょう!

自分の気持ちに区切りを付けて、毎回最後は美しく終わる授業にしていきましょう。



いかがでしたか?



私個人としては、一見体の準備をすることにまず意識が向いてしまいがちな体育の授業に、「まずは心の準備をして」という新しい視点を提示できる語りになったかなと思います。

また、「カンニングをしていい」という言葉がまた子どもたちの興味をそそるなと思いましたし、洋服屋さんの喩えもステキですよね。

ここで言う服とは、体育の授業だと動き方のコツのことだと整合性をもたせてみました。

服選びをするように、自分に合ったコツを探していけばいいんだと伝わればと思います。

最後は美しく終わる。これも大切なことですよね。

スポーツマンシップの考え方にもつながります。



元の投稿で伝えていることを残しながら、より自分なりにアレンジして小話として昇華して創る。

このように創る力を鍛えていくと、どんな素材からも話を創り直すことができるようになります。


この度も快く素材提供してくださったフォロワーさんのおかげでとっておきの話を創ることができました。

ありがとうございました。




ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。

気になった方はぜひ、実践してみてください。

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